不動産のこと

譲渡所得税率とは?短期譲渡と長期譲渡の違い

2022.02.02 不動産のこと

不動産を売却する際に、必ず知っておきたいのが「譲渡所得税率」についてです。

「新しい不動産の方が売却しやすく売却益が出やすいのでは」と考え、所有してから短期間で売却しようと考える人もいるかもしれません。

ところが、国としてはバブル期以降、短期間での不動産の売買をできるだけ抑制したいという考えから、所有してから短期間しか経過していない売却に対しては、高い税率が課される法制度になっています。

今回は、売却するにあたって譲渡所得税率で損をしないように、短期譲渡と長期譲渡の違いについて説明します。

 

譲渡所得税率とは?短期譲渡と長期譲渡の違いを解説

<譲渡所得税率の期限設定ができた経緯>

そもそも、譲渡所得とは、土地や建物などの不動産を売ったときに得られる利益のことです。

そして、その譲渡所得に譲渡所得税率を掛けて出た費用が、譲渡所得税となりますが、この譲渡所得税率は、所有が短期間であると、高い税率になるように法制度で整備されています。

この経緯としては、バブル期に投資目的で短期間所有の不動産が売買されることにより、不動産価格が高騰し、投資目的でなく純粋な住居目的で土地を買い、家を建てようとしても正当な価格で不動産が手に入らない事態が発生していました。

そこで、国としては、「土地ころがし」などの投資目的の不動産売却を可能な限り抑制するために、所有してから5年までの短期譲渡については高い税率を、所有5年以上の長期譲渡については低い税率を課すことにしたのです。

 

<短期譲渡と長期譲渡の違いとは>

短期譲渡と長期譲渡について簡単に説明すると、以下のとおりです。

・短期譲渡:不動産を売却した年の1月1日時点で不動産を購入した日から5年以下の譲渡のこと

・長期譲渡:不動産を売却した年の1月1日時点で不動産を購入した日から5年以上経っている譲渡のこと

 

次に、短期譲渡、長期譲渡それぞれにおける、譲渡所得税率を説明します。

まずは、所得税については、

・短期譲渡:譲渡所得の30%

・長期譲渡:譲渡所得の15%

うち、10年以上で所得額が6000万円以下の場合:10.21%

10年以上で所得額が6000万円超の場合:15.315% となります。

 

また、短期譲渡、長期譲渡の譲渡所得税率の違いは、住民税にも及びます。

・短期譲渡:譲渡所得の9%

・長期譲渡:譲渡所得の5%

うち、10年以上で所得額が6000万円以下の場合:4%

10年以上で所得額が6000万円超の場合:5%

以上のとおり長期譲渡の場合、所得税は譲渡所得の15%、住民税は5%と、短期譲渡の半分の税率で済むことが分かります。

不動産売買をするにあたっては、単に不動産の売値だけでなく、不動産を所有してからの期間(短期譲渡か長期譲渡か)を意識することが重要なのです。

 

譲渡所得税率をふまえ、短期譲渡で不動産売却時に得になる場合とは?

譲渡所得税率を考えると、短期譲渡より長期譲渡の方が得になるケースが多いことが分かりました。

ただ、ケースによっては、短期譲渡の方が不動産売却で得になることもあるのです。

<①所有期間が長くなり固定資産税がかさむ場合>

たとえば、長期譲渡の場合は不動産を所有している期間が長い分、固定資産税も長い期間払わなくてはいけず、結果して短期譲渡の方が税金面で得になる場合もあります。

以下、短期譲渡も長期譲渡もいずれも譲渡所得が500万円だったと仮定し、シミュレーションしてみます。

●短期譲渡の場合

・譲渡所得 500万円

・所得税 500×0.3=150万円

・住民税 500×0.09=45万円

・復興所得税 150×0.21=31万5千円

・固定資産税 15万円×1年=15万円

・税金総額 241万5千円

 

●長期譲渡の場合

・譲渡所得 500万円

・所得税 500×0.15=75万円

・住民税 500×0.05=25万円

・復興所得税 150×0.21=31万5千円

・固定資産税 15万円×8年=120万円

・税金総額 251万5千円

 

●結果

このケースにおいては、所有期間7年違うと、固定資産税の支払い総額が増えたことで、譲渡所得税率が高くとも短期譲渡の方が得になります。

それ以外でも、たとえばマンションの管理費などの維持費も、所有期間が長くなればなるほどかさんでくることも考慮する必要があります。

 

<②マイホーム特例が適用される場合>

また、「マイホーム特例」と呼ばれる特例が適用される場合は、所有期間の長短に関係なく、譲渡所得から最高3,000万円まで控除することができます。

別荘などの住宅には適用されませんが、マイホーム特例適用条件を満たしていて、3,000万円までの特別控除がされるのであれば、純粋に譲渡所得が大きいタイミングで売却する方が得だと言えます。

 

<③建物の築年数が浅く、高く売却できる場合>

一般的に、建物の築年数が浅ければ浅いほど高く売却できます。

固定資産税をさしおいても、早いタイミングで売却した方が高く売却できる場合は、譲渡所得税率が低い長期譲渡より短期譲渡の方がお得になることもあります。

譲渡所得税率で短期譲渡でもお得になる、相続時の特例

譲渡所得をした場合、基本的には譲渡所得税率がかかり所得税と住民税を支払う必要があります。

ただし、相続後の不動産売却においては、適用できる特例や控除があるためご紹介します。

特例や控除を利用すれば、譲渡所得税率が高い短期譲渡でもお得になるケースがあります。

 

<取得費加算の特例>

相続時に相続税を払ったうえに、相続不動産を売却しさらに所得税と住民税を支払うことになると、相続者には多大な税負担がのしかかります。

そこで、せめてもの税負担軽減のために、相続時に支払った相続税の額を取得費に加算できる特例があります。

取得費に加算できることで、結果して譲渡所得税の負担を小さくすることができます。

ただし、「相続開始日の翌日から3年10か月以内に売却していること」が要件となっているため、売却のタイミングには注意が必要です。

 

<相続空き家売却の特例>

続いては、空き家をできるだけ減らしたいという国の思いからできた特例です。

相続により取得した空き家を耐震リフォーム後に売却、もしくは、空き家を取り壊して更地にして売却した場合、譲渡所得から3,000万円まで控除できるといった内容です。

ただし、この制度は被相続人が亡くなった時点で1人暮らしであることが条件となっています。

また、取得費加算の特例との併用ができないことから、どちらの特例を選択した方が得なのか、熟考する必要があります。

 

<マイホーム特例の併用>

マイホームを売却した場合は、上述したとおりさまざまな特例を適用することができますが、相続時の特例との併用も可能です。

たとえば、以下のような特例があります。

・マイホームを譲渡した際の最大3,000万円の特別控除

・マイホームを譲渡した際の軽減税率(3,000万円を超え6,000万円以下の部分の金額)

・特定のマイホームを買い替えた際の譲渡益の先送り

・マイホームを買い替えた際に譲渡損失が発生した場合の繰り越し

・住宅ローンが残っているマイホームを売却した際に譲渡損失が発生した場合の繰り越し

このように、相続時は適用できる特例が多いことから、譲渡所得税率が高い短期譲渡でも特になることもあります。

 

まとめ

以上、短期譲渡と長期譲渡の違いなどについてご紹介しました。

基本的には長期譲渡の方が、譲渡所得税率が低いためお得にはなります。

ただ、固定資産税や売却時の価格、マイホーム特例、相続時の特例など、さまざまな要素や特例・控除を考慮すると短期譲渡の方がお得になることもあるため、不動産売却時には所有期間だけでなく、特例なども念頭におき、検討すると良いでしょう。

 

※いえらぶコラムより

 

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